企業の法務部で働く場合、そのストレスってどんなものがあるでしょうか?
そもそも「法務部の仕事はつらいでしょ?」と思う人もいるかもしれませんね。
この記事では、東証一部上場企業で現役の法務部員として働く筆者が「どんなときにストレス」を感じるのかについて、お伝えしたいと思います。
法務部員はストレスをどんな時に感じる?
法務部員がストレスを感じるのは、例えば、次のようなものがあると思います。
- 急ぎの仕事
- 営業担当者との衝突
- 営業担当者のスルーパス
- 外部弁護士との「戦い」
法務部員のストレス1:急ぎの仕事
ストレスを感じてしまうものの1つ目は、急ぎの仕事です。
急に「明日までに」なんて言われて、契約書のチェックを依頼された場合には、なかなかストレスを感じてしまいます。
だいたい、依頼する側の営業担当者などは簡単に「明日までに」なんて言いますが、かなり難しい場合が多いと思うんですよね。
契約書のチェック(さらには契約書の作成など)には、どうしても時間がかかります。
契約チェックは正確性が非常に大切ですし、契約書の文言を作るのにミスは許されません。
そうすると、しっかりと時間をかけて、作った契約書を確認する必要がありますよね。
また、契約書をチェックしたり、作ったりする際には、関係する法律や資料を読み込む必要があります。
なので、たったA4一枚の覚書をチェックするだけでも、とんでもない労力や時間がかかる場合もあるわけです。
そういったことを営業担当者は理解してくれなかったりするのも、ストレスだったりします。
もちろん、営業担当者の立場からすると、取引先との関係だったり、事業のスケジュールなどといった事情があることも理解はします。
(じゃあ、「もっと前もって予定を立てて動けよ」という気持ちになることも、しばしば有りますが・・・)
なかなか難しいですね。
法務部員のストレス2:営業担当者との衝突
ストレスを感じることの2つ目は、営業担当者(他部署の人)との衝突です。
もちろん、営業担当者(他部署の人)は同じ会社の仲間であり、協力する相手なのですが、たまに口論みたいな感じのことが起きたりします。
例えば、ある契約を取引先との間で締結しないといけない場合で、取引先と契約交渉をしている場面を考えてみます。
営業担当者はスケジュール(スピード)を優先して、「この条件は譲歩してもいいでしょう」と言う場合があります。
しかし、法務部員からすると「それはリスクがあるからダメ」と立場上どうしても言わざるを得なかったりします。
そうすると、どうしても同じ会社の人間同士で衝突してしまうことが起きたりするんですよね。
法務部員としては、「会社を守るためにリスクを避けなければいけない」「リスクのある条件は譲歩してはいけない」と考えます。
その一方で、営業担当者は「会社のために利益を増やすには早く契約を締結する必要が有る」「スピードを優先して契約条件は譲歩しても仕方ない」みたいに考えたりするわけです。
どちらも「会社のため」という目的は共有しているわけなのですが、それなのに仲間同士で言い争いになったりするのは辛いですね。
法務部員からしても、営業担当者の立場(考え方)は理解できるわけなので、それでもなお口論になったりするのが、やるせなかったりします。
法務部員のストレス3:営業担当者のスルーパス
法務部員がストレスを感じるものの3つ目は、営業担当者の「スルーパス」です。
つまり、契約書については、きちんと読んだりせず、「右から左にパス」しちゃう営業担当者には、ストレスを感じるところです。
せっかく、こちらが契約書を一生懸命に作り、そして、その内容について説明しても、営業担当者はきちん理解していない(理解しようとしない)と辛いです。
また、取引先から契約書のドラフトを提示されたときに「取引先から契約書を送られてきたのでチェックしてください(内容は読んでないけど)」みたいな感じで、契約チェックを依頼されるのも辛いです。
これだったら、まだ「衝突はするけど契約書をきちんと読んでくれる営業担当者」の方がマシかもしれません。
そういう営業担当者とやり取りをしていると、正直、まじめに契約チェックや、契約書のドラフト作業をするのが馬鹿らしくなっちゃうんですよね。
「取引先から送られてきた契約書を法務部へ」「法務部が作った契約書を取引先へ」と、ただ単純に「右から左へ」みたいな感じで転送するだけの営業担当者のために頑張る気持ちにはならないです。
しかも、そのくせ「速くしてください」と急かすことだけはしてくる人だと、こちらのストレスは倍増です。
営業担当者も忙しいだろうということは理解するのですが、それでも、きちんと契約関係について当事者意識を持ってほしいものです。
法務部員のストレス4:外部弁護士との「戦い」
ストレスを感じるものの4つ目は、外部弁護士との「戦い」です。
法務部員であっても、何でもかんでも知っていたり、対応できるわけでは無いので、外部の弁護士事務所に相談することがあります。
その際、弁護士事務所が「答えはこれです!」みたいな感じで、バチっと回答してくれると嬉しいのですが、場合によっては、「これはグレーです」みたいな曖昧な回答をされてしまう場合があります。
これは辛いです。
こちらとしては、「社内の法務部(自分たち)では分からないから、わざわざ相談している」のに、それで曖昧な回答をされてしまっては、どうしようもありません。
さらに言えば、社内に対する説明もできません。
つまり、「弁護士が大丈夫と言っているから、この案件はやっても良いです」とか、「弁護士が明確にダメと言っているから、この案件はやってはダメなんです」といった説明が社内でできないわけです。
ある意味、法務部員は、社内での説明や説得のために、外部弁護士に相談するということをやる面があります。
なので、その説明や説得の材料にならない回答をする弁護士事務所は「イマイチだな」と思ってしまうのが正直なところです。
もちろん、外部弁護士としては、「間違った回答をしないようにするため曖昧な回答をせざるを得ない」というポイントがあるのだとは理解しています。
ただ、明確な答えが欲しい法務部員と、曖昧な回答をせざるを得ない外部弁護士との間には、一種の「戦い」があると言えそうです。
外部弁護士との「戦い」といえば、弁護士に支払う代金(フィー)でもバトルになることがあります。
もちろん、企業側としては「安くしたい」と考えていますし、弁護士側は「高くしたい」と考えます。
一方で、(時には弁護士に無茶なお願いをしてしまうことになる)法務部員としては、「お世話になったし、あまり弁護士費用を値切りたくないな」と思ったりもします。
そうすると、法務部員は、外部弁護士と、社内の弁護士費用を負担する部門(営業部)との間で板挟みになっちゃんですよね・・・
これもなかなかストレスです。
まとめ
企業の法務部員がどんなときにストレスを感じるのかについて、解説してみました。
もしかしたら、「そんなことで法務部員はストレスを感じているのか」と驚いたかもしれませんね。
もし、この記事が少しでもあなたの役に立ったののなら幸いです。
[あわせて読みたい]
・企業の法務部の仕事はきつい?現役の法務部員が実感を述べます
・法務の転職は難しいですか?現役の法務部員が考えてみました
・商社の法務部の年収はいくら?現役の法務マンが解説します
コメント