あなたは企業の法務部の仕事内容について、ご存知ですか?
「なんとなく法律関係の仕事っていうのは分かるけど、具体的には分からない」という人もいるかもしれませんね。
実際のところどんな仕事をしているのでしょうか?
そこで、企業の法務部の仕事内容について、現役の法務部員である筆者が解説したいと思います。
企業の法務部の仕事内容とは?
企業の法務部の仕事内容としては、大きく分けて次のものが挙げられるかと思います。
- 契約書の作成やチェック
- 各事業部からの質問への回答
- 訴訟の対応
- 法務関係の社内研修
- 社外弁護士との人脈作り
※企業によって、法務部が担う役割や仕事の内容は異なると思います。
(例えば、法務部が知的財産権の管理業務を行っている企業も有るかもしれません。)
企業の法務部の仕事内容1:契約書の作成やチェック
まずは契約書の作成やチェックといった仕事が挙げられます。
自社で契約書を作ったり、相手から提示された契約書をチェックして修正したりする仕事ですね。
ちなみに、一言で「契約書」といっても、その種類は様々です。
一例を挙げてみるだけでも、次のようなものがあります。
・材料を仕入れるための購買契約書
・自社製品を売るための販売契約書
・他社にアウトソーシングするための業務委託契約書
・他の企業を買収するための株式譲渡契約書
・廃棄物を処理するための産業廃棄物処理契約書
企業によっては、海外企業と取引をしていて、英語の契約書を締結するところもあると思います。
そういった場合には、当然のことながら、英語での契約書の読み書きも法務部の仕事内容に含まれることになります。
企業の法務部の仕事内容2:各事業部からの質問への回答
各事業部からの質問への回答も法務部の大切な仕事です。
上記のような契約書のチェックを行う中で、各事業部の担当者から「こういう場合は法律上どのように考えたらいい?」「どのように契約書に条件を定めればいい?」などと質問を受ける場合もあるので、それに回答することも重要な仕事です。
この際には、どれだけ分かりやすく説明できるかという「説明力」が大切になります。
企業の法務部の仕事内容3:訴訟の対応
訴訟の対応も法務部の仕事です。
できればこのような「後ろ向きの仕事」は無い方が良いのですが、どうしても避けられないときもあります。
訴える側になるにせよ、訴えられる側になるにせよ、社内の関係者から証拠となる資料を集め、丁寧に過去の記録を読み解き、それを弁護士に伝えて有利な訴訟戦略を練っていくことになります。
企業の法務部の仕事内容4:法務関係の社内研修
法務関係の社内研修というのも法務部の仕事です。
どのような社内研修を行うのかは企業によって千差万別だと思いますが、例えば「契約書の読み方」を教えたり、「下請代金支払遅延等防止法に定められている禁止事項」を社内に浸透させて法令違反を防止するようにしたりすることが考えられます。
下請代金支払遅延等防止法については、こちらのウィキペディアの記事や中小企業庁のホームページ(のガイドブック)もどうぞ。
社内のリーガルマインドを醸成するため(これがなかなか難しいのですが)、法務部は日々頭をひねっています。
企業の法務部の仕事内容5:社外弁護士との人脈作り
社外弁護士との人脈作りも重要です。
買収案件にせよ、訴訟対応にせよ、弁護士の力は必須となりますが、実は弁護士(法律事務所)によって、その得意分野は異なります。
例えば、債権回収に強かったり、海外進出に強かったり、あるいは特許権に関する紛争に強かったり・・・
弁護士の専門とする分野が異なっていたりするので、広範な領域で質の高い弁護士サポートを受けようとすると、多数の弁護士とコネクションを作っておくことが必要になるわけです。
また、場合によっては、依頼しようとしていた弁護士(法律事務所)が、紛争相手の代理人になっていて、こちらの依頼を受けられない状態(いわゆる「コンフリクト」)になっている場合もあるので、そういったときに備えて、同じ分野であったとしても、その分野を得意とする複数の弁護士(法律事務所)とつながりを持っているのが良いですね。
コンフリクトについては、別サイトになりますが、こちらのページの「1.利益相反」が参考になるかもしれません。
企業に法務部があるメリット
ここまで読んでいただいて、あなたは「外部の弁護士とコネクションが有れば、社内に法務部なんか要らなくない?」と思うかもしれませんね。
しかし、それは早計です。
企業の中に法務部があることには、下記のように十分メリットがあるのです。
企業に法務部があるメリット1:弁護士費用を節約できる
1つ目のメリットは、弁護士費用を節約できることです。
多くの場合、弁護士に仕事を依頼したときの料金制度はタイムチャージ制であり、しかも高額です。
つまり、「1時間あたり数万円」みたいな感じで、弁護士に作業をしてもらった分だけどんどん料金がかかるわけです。
簡単な案件であれば、さほど高額にはならないかもしれませんが、少しでも複雑な案件になり、読み込む資料が増えたり、打ち合わせが増えたりすると、弁護士費用が莫大な金額に膨れ上がることになります。
ちなみに、一般的にアメリカの弁護士は、その報酬が非常に高額であるという話を聞いたことが有ります。
特許関連の紛争でアメリカの弁護士に依頼をすると、その弁護士費用だけで「数億円」になることもあるんだとか。
めちゃくちゃ高いですよね・・・
どんな案件でも外部の弁護士に依頼していては、凄まじい費用が発生することになります。
そのため、わざわざ外部の弁護士にお願いするほどでもない案件は、社内の法務部が取り扱い、これによって弁護士費用を節約することができるのです。
企業に法務部があるメリット2:社内事情に精通している
2つ目のメリットとしては、法務部は社内事情に精通しているということです。
当たり前ですが、企業内にある法務部は、その企業の事情や実情についてよく理解しています。
これにより、各事業部からの問い合わせや契約のチェック依頼についても、「痒い所に手が届く」対応を行いやすいです。
また、社外の弁護士に仕事を依頼する場合であっても、法律知識を持つ法務部が「弁護士との橋渡し役」になることで、スムーズな情報伝達が可能になります。
弁護士は、「法律のプロ」ではありますが、企業が行っているビジネスについては素人であることが多いですし、また各事業部の担当者は「ビジネスのプロ」ではありますが、法律については素人だったりします。
そうすると、この両者が単純に話をするだけだと、上手くやりとりができない場合がありますし、また、時間がかかることにより、弁護士費用が増えてしまうという可能性も有ります。
そこで、法律知識とビジネス知識を併せ持つ法務部が「橋渡し役」として活躍するわけですね。
まとめ
法務部の仕事について、解説してみました。
なんとなく「よく分からないけど法務はエリートの仕事だと思っていた」という人も、具体的にイメージができるようになったのではないでしょうか。
もしこの記事があなたにとって少しでも役に立ったのなら幸いです。
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